読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

「電子書籍」という名前はふさわしくないんじゃないかと思う

考えてみた

電子書籍リーダとしてKindleを使っており、これはこれで便利ではあるが、個人的には「電子書籍」という名前はよくない。なまじ「書籍」の名を冠しているせいか、みんなこれを「紙の書籍の代替物」としか捉えていない節がある。Kindleストアを見てみると、電子書籍として販売されているのはどれも紙の本のデータ版そのままであり、自分を含め皆、「安い」とか「複数の本を手軽に同時に持ち歩ける」といった、利便性の面でしか電子書籍のメリットを見出せていない。しかし実際、電子書籍は紙の本とはまったく性質の異なるメディアであり、単なる紙の書籍の代替物として済ませてしまうのは非常にもったいないものである。

電子書籍と紙の書籍の違い

では電子書籍の目指す方向性としてどのようなものが考えられるか。そのために、紙の書籍と比較した電子書籍の特性を洗い出してみる。

①大きさ・重さが無い

データである電子書籍には大きさ・重さが無く、インターフェースとなるタブレットなどの端末さえあれば理論上いくらでも持ち出すことができる。端末の記憶容量の問題はあるかもしれないが。また、デバイス分以外の厚みもなく、ページを読み進めても本の形状が変わりはしないので、今自分が本のどのあたりを読んでいるのかは内容からの推察と、「○○%」と表示されたメータでしか確認できない。

②動画の掲載が可能である

紙の書籍では写真などの静止画を載せることしかできないが、電子書籍の場合、(いまのところ見たことが無いが)動画をページの途中に貼り付けることが可能なはずである。小説であれば、ある特定のシーンだけは映像で描写する、などということも可能だろう。もしかしたらハリーポッターの世界の新聞のような、中のキャラクターがインタラクティブに動き回るようなこともできるかもしれない。

③コンテンツの移動が可能である

②と関連することだが、紙の書籍は印刷され製本されてしまった時点で、そのコンテンツの場所は固定されてしまう。27ページにあったものが突然159ページに移動したりはしないのである。同様に27ページの1行目にあったものが12行目に移動したりもしない。しかし電子書籍ではそれぞれのコンテンツはきちんとディレクトリ管理されており、読むたびに目次の順番が異なる本なども制作可能なはずだ。

④読者によるコンテンツの書き換えが可能である

紙の書籍は、そこにメモを書き込んだり付箋を貼ったりすることは可能かもしれないが、本のコンテンツそのものを書き換えることは不可能である。電子書籍ではデータを上書きしてコンテンツを自分用に書き換えることが可能である。もしくは出版する側がそれを初めから考慮に入れて、例えばゲーム用に自分の名前を入力すれば主人公の名前がそれに書き換えられる、なんてこともあるかもしれない(自分は絶対にやりたくないが)。

⑤ネットワークでつながっている

紙の書籍はいわばスタンドアロンである。一度誰かの手に渡ってしまえば、他の誰かが持っている同じ本と連携することはできない。もし誰かが持っているのが誤字脱字が修正された最新版だったとしても、第一版を持っている者にはそんなことは知る由も無いのである。電子書籍クラウドで管理されているため、修正や内容が追加された最新版が出ればその都度それにアップデートすることが可能である。さらに他の人がどんな本をいつどこまで読んだかがリアルタイムでわかる(はずである)。

他にいくらでもあるだろうが、パッと思いつく違いはこんなところである。せっかく電子書籍というものを使うのであれば、こうした違いを積極的に利用していったほうが建設的である。今の電子書籍は①の違いしか活用できていないように思えるのだ。

電子書籍ならではの可能性を考える

特に⑤の違いはいくらでも応用可能である。おそらく現在でもマーケティングにおけるデータ分析のためにこの違いは活用されているだろうが、これを読者に展開するとなると、簡単なものであればどんどんコンテンツが追加されていく課金型の本が可能だろうし、例えば「今まさに同じ本を読んでいる人たちのコミュニティ」が作成可能である。発売初日に数十万部売れるような本であれば、同時にその本を読んでいる人はかなりいるだろうから、その人同士で意見を交し合う場を用意すれば、ネット上でよく行われている「実況」みたいな場が生まれるかもしれない。また、④の違いと組み合わせて、ある本のコンテンツを書き換えた二次創作物を発表しあうコミュニティを作ることも可能であろう。他にも、ある消費者データをコンテンツとして掲載していれば、読んでいる最中にそこに投票することで、そのデータはより新しいものにアップデートされる。そしてそれがネットワークで他の人の本にも反映される。

いくらでも展開可能である。どれも共通しているのは、出版された後も内容やその価値がどんどん変化していくということである。紙の書籍だってその価値は世の中の状況などによっていくらでも変化していたが、そのスピードや関わる主体の数が段違いなのである。そうしたダイナミックさを積極的に取り入れていかないと、電子書籍電子書籍たる意義が薄れていってしまうのではないだろうか。